DLP8092Cの真実

 購入した後に色々調べてみて、色々なことが分かったので簡単にまとめてみたいと思います。結論から言うと、Amazonで購入したDLP8092Cを返品してNotrturm 1000を購入し直したのは、正しい判断だったと思っています。

 実に様々な製品が跳梁跋扈しているポータブル電源ですが、少なくとも今回管理人が購入した製品は、複数の様々なブランドから様々な製品名で販売されていることがほぼ確実であると考えています。

DLP8092Cの真の製造元

 いろいろリサーチをした結果、最終的に本製品の真の製造元は 深圳市鑫嘉恒科技有限公司 (Shenzhen Everplus Technology Co.,Ltd.) であるという結論に達しました。この企業は中国のシリコンバレーと呼ばれる深圳 (深セン) にある企業で、電源製品専門の会社です。トップページに “As a result of our efforts and sustained investments, we have become an approved ODM vendor for many international brands from North America, Japan and Europe.” と書かれており、自社ブランドではなくODMでの製造を請け負うのがメインの会社のようです。今回管理人が購入した製品は、PowerStation 1000という非常に一般的な名前で同社のWebページに掲載されていました。

 先にNortrumがPhilipsからODMを受けたのでは、と書きましたが、実際のところNortrumもPhilipsと同じようにODM元であり、これらの会社からODMを受けたのはEverplus だったというのが真実のようです。また、後述しますが、本製品はPhilipsの名前でクラウドファンディングを開始するよりもずっと前に製品として存在していたようです。クラウドファンディングにもいろいろなスタイルがあるので一概には言えないのかもしれませんが、すでにどこかのODMで開発済 or Everplusが独自に開発したPowerStation 1000について、そのロゴだけを変えた製品を販売するに際してクラウドファンディングで支援者を募集するというのは、個人的にはちょっと違和感があります

DLP8092Cの仲間たち

 DLP8092Cには、まだ市場に出ていない製品 (今後登場するかも) も含めて、微妙に仕様が異なる製品群があります。まずはそれらを簡単に整理しておきたいと思います。

PEP-S1000

 本稿執筆時点での現行製品だと思われます。DLP8092Cを基準に考えると、当該製品にQi充電機能 (= 無線経由でスマホを本体上部に置くだけで充電できる機能) が追加された製品ということになります。後述するIRIE S1000のプロモーションビデオとしてIRIE Lifeがアップロードしたものではありますが、日本語の紹介動画があったので載せておきます。ちなみにこの動画の投稿日は2021/7/7なので、Philipsのクラウドファンディング開始 (2021/12) の半年近く前の時点で、確実に生産済みの製品が存在していたことになります。

IRIE PEP-S1000

PEP-S1000B

 PEP-S1000からQi充電機能を省略した廉価版です。型番から言って先にS1000があり、そこから一部機能を省略した廉価版を派生させたのではないかと思いますが、実際のところどちらが先にあったのかはわかりません。市場を見る限り、本製品は販売終了の方向に向かっているようにしか思えないので、Qi充電機能が不要な方にはコスパが高いモデルといえるでしょう。 

PEP-S1000C

 少なくとも本稿執筆時点での販売は確認できませんでしたが、PEP-S1000Cという製品について、同社の営業部長がLinkedInに投稿した画像があります(閲覧にはLinkedInへのログインが必要)。どうやら入力としてAC 500Wが追加されたもののようですが、何しろ情報がないのでよくわかりません。PEP-S1000のAC入力はアダプタ経由でしたが、ACアダプタが不要 = 内蔵されたということのようですが、逆にそれ以外の違いはないように見えます。正直、あまりメリットは感じられないという印象です。

PEP-S1500

 前述の営業部長のLinkedInに、PEP-S1000の電源容量を1,500Wに拡張したと思われるPEP-S1500の写真が載せられています。こちらはスペックは一切不明で写真しかありませんが、見た目ではPEP-S1000を少し縦に伸ばした感じで、入出力仕様は変わっていないように見えます。すでに開発は完了しているようですが、投稿日が2022年以降のようなので、現在販売パートナーを探しているという状況でしょうか。本稿執筆時点では販売は確認できませんが、近いうちに市場で見かけるようになるかもしれません。

実際に販売されている製品とその入手先

 上記で現在市場に出ているのはS1000とS1000Bのみですが、これらについては実に様々なところが様々な名前で、そして異なる価格で販売を行っています。以下に管理人が確認した限りの製品をまとめておきます。

(≒S1000 / 販売実績なし) IRIE PEP-S1000 (2021/7~?)

 前述のEverplus社の営業部長のLinkedInには、ODM (先のブランドで販売されている製品) についていくつかの言及がありますが、最初に登場するのがこのIRIE PEP-S1000です。この製品はGREENというクラウドファンディングサイトで、前述の動画の投稿日付からすると遅くとも2021/7頃には募集が開始されていたようです。

 実はこのクラウドファンディング、2022/1頃の商品配送を目指していたようですが、2021/8/11にメーカーとの契約の問題で頓挫したとされています。おそらくはこのためだと思われますが、クラウドファンディングを含めて本製品の販売は確認できませんでした。なお、このクラウドファンディングのページには、内蔵電池はホンダやスズキの電気自動車で採用されているものとの記載があります。

 ちなみにこのIRIEという会社、別のクラウドファンディングであるMakuakeでも電源関連の募集を行っています。2020年12月に開始されたG1000は成功裏に終了しており、DLP8092Cの比較表の比較対象にもなっています。

(≒S1000B / 74,037円) : PhewMan1000 (2021/5~?)

 前述の営業部長のLinkedInで次に登場するのが、PhewMan1000です。こちらはクラウドファンディングではなく普通にAmazonで販売されています。販売ページの一番上にある画像を見るとQi充電機能がありそうですが、それ以外の画像にはその気配はないので、S1000B相当の製品だと思われます。LinkedInでの投稿日は2021/9頃だと思われますがAmazonへのPhewMan1000の取り扱い開始日は2021/5/9、PhewManSmart500という下位モデルはなんと2020/11/5となっているため、確認できる限りではPhewManがEverPlus社製ポータブル電源製品の日本国内での最古参のODM元ということになります。

 Amazonの販売ページには、本製品は防災製品等推奨品に登録されているとの記載があります。信頼があるほかのソースは確認できませんでしたが、これが事実であれば同一仕様の他製品にも同等の信頼性があることを意味します。なお、本製品は国内企業によるサポートを前面に出していますが、おそらくこれはかつて楽天で同製品を販売していた (2021/11/21撤退) 株式会社イデアルだと思われます。同社のドメインは利用されていないようですが、Facebookでは元気に活動されているので、現時点でもおそらくサポートは問題ないと思われます。

(≒S1000B / 59,800円~) Nortrum ポータブル電源1000 (2021/7~?)

 管理人が実際に購入し、現在手元にある電源です。楽天で絶賛在庫処分中であることから、本製品は2022/1時点で流通在庫のみの販売で、おそらくそれが尽きたら販売が終了するものと思われます。この製品の販売開始時期については情報がないのですが、楽天の最初のレビューが2021/8/4についているので、遅くとも2021/7頃には楽天で販売が開始されていたことは確実でしょう。


 少なくとも2022/1時点で管理人が確認した限りの中では、PEP-S1000Bの同等品としては圧倒的に安価です。ちなみに、S1000とS1000Bの箱は共通なようで、自宅に届いた製品の当製品の外箱にQi充電機能に関する記載があってテンションが上がりましたが、中身の製品にはその機能はありませんでした (当たり前ですね)。

 本製品のブランド名となっているNortrumについて調べてみましたが、まず2006年創業の诺臣光电科技(上海)股份有限公司 (Nortrum Lighting TECHNOLOGY(Shanghai) Co., Ltd.) という中国の会社があって、その日本法人として2014年5月に株式会社ノートン・ライティングテクノロジージャパンが設立されたようです。この日本法人は現在でも存続していますが、2016年に丹波貿易株式会社と資本提携を行っています。同社の現在の社長 = 丹波貿易株式会社の社長なので、おそらく実態としては子会社化されたのでしょう。後述しますが、丹波貿易株式会社は自社ブランドでPEP-S1000同等品を販売しているため、NortrumブランドのPEP-S1000Bベースの製品の在庫処分を行なっているものと思われます

 なお、本製品は89,001円で楽天の他のショップでも販売されています (掲載製品名の関係でとても見つけづらいですが)。もし在庫処分の在庫が尽きたら、これらの店舗を見てみるといいかもしれません。PEP-S1000Bは生産中止されている可能性が高いと思われるので、運が良ければ在庫処分に出会えるかもしれません (アット通販 / グッズバンク楽天市場店 / へるすぴあ楽天市場店)。

(≒S1000, 140,000円) TA-PD001 (2021/9~)

  調査時点の最新の現行製品で、もっとも多くの店舗で販売されているのが、丹波貿易商事が自社ブランド製品として発売したTA-PD001です。販売開始に際し、丹波貿易商事がプレスリリースを打っていることからも、販売の本気度が伝わってきます (PRTimes, 価格.com)。本製品に限ってはビッグカメラ、ヨドバシカメラ、ヤマダデンキ、エディオンなどの家電大手量販店でも販売されています。店頭販売もあるようなので、実店舗に足を運べば実機を見ることもできるようです (利用目的を考えると、見てもあまり意味はない気がしますが…)。

 本製品はどこを見ても140,000円 (高い…) で販売されていますが、実際に購入するとなると10%以上のポイント還元が望めるYahoo!ショッピングか楽天の2択になると思います。調査時点ではどこもお取り寄せになっていましたが、ここでは、画像サンプル代わりに楽天xビッグの広告を載せておきます。画像を見ると、本体上部にQi充電機能があるのがわかります。


 実は丹波貿易商事は楽天やYahoo!ショッピング、Amazonににも直営店を出している/いたようですが、なぜかいずれの店舗でもTA-PD001は取り扱っていないようです。大手サイトで扱っているので、直販では販売しないということなのでしょう。

(≒S1000B / 98,000円) INNCAP ポータブル電源 大容量 (正式名称不明、2021/12~)

 PhewMan1000と同じく、Amazonでのみ取り扱いがあるPEP-S1000B相当の製品です。Amazonでの取り扱い開始日が2021/12/20とされているため、順番としては最後ということになるはずです。販売元はCLINFISHという店舗ですが、取扱商品数も少なくよくわかりませんでした。販売価格は高額ですが在庫は十分にあるようなので、緊急事態の時にとにかく急いで欲しい、という状況であれば、検討する価値があるかもしれません。

最後に

 いかがでしょうか。ほぼ or 全く同一仕様の製品でも販売元や販売形態によって価格に非常に大きな幅があることに驚いた方もいるのではないでしょうか。管理人が今回、手元に届いたDLP-8092Cを開梱する前に同等製品の存在に気が付いたのは偶然でしたが、もし開梱していたら返品はできなかった (開封済みは返金額が50%になるので実質無意味) ので、とてもラッキーでした。

 Jackeryをはじめとする他社製品と見比べてみても、信頼性や価格面から考えて、PEP-1000シリーズはかなり優秀だと思っています。Nortrumポータブル電源1000の楽天での販売価格59,800円は、Jackeryのラインアップだと708とほぼ同等です。この手の製品でできること、あるいは持続時間は基本的に製品の容量に比例しますし、こと災害対策に限れば (=携帯性を無視すれば) 大は小を兼ねます。充電可能回数を考えれば頻繁に買い直すものではないので、初回購入時にはよくよく考えて購入することをお勧めします。ちなみに管理人は、PEP-S1500が10万円以下で販売されていたら、迷わずそちらを購入したと思います!

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