“異常に”安価なPowerDVDの正体

“異常に”安価なPowerDVDの正体

 ヤフオクでサイバーリンクの製品名を検索すると、異常に安価な製品が多数引っ掛かります (特に多いのがPowerDVD)。これらはまず間違いなく正規の製品ではありませんが、出品者も全力でごまかそうとするため、見極めるには一定の知識が必要です。本稿では出品者が実際に用いる特徴的な文言を示しながら、おかしな点を論理的かつわかりやすく整理します。

“OEM版のため登録はできません”

 そもそも、正規の製品であればOEM版であってもサイバーリンクへの製品登録はできます。つまり、“登録ができない”としている時点で、自ら正規の製品ではないと認めているようなものなのです。

 また、確かにサイバーリンクの製品にはOEM版が存在します。しかし、それらはPC本体や光学ドライブなどにインストールメディアの同梱という限られた形態でのみの提供で、ダウンロード形態で提供されるOEM版は原則存在しません (例外的に、Dellなど一部超大手メーカー製PCのバンドル版は別途ダウンロードする場合がある)。つまり、ダウンロード版のOEMという触れ込みは、自ら正規の製品ではないと謳っているに等しいことになります。

 ちなみに、DVDなどのメディアで出品されているOEM版の製品は、ある意味”正しい”OEM版です。更新頻度の関係か現行版よりも数世代前の製品になりますが、それで十分であれば検討する価値はあるでしょう。もっとも、前述の通りOEM版は指定された製品の同時購入が条件となるため、OEM版のソフトウェア”だけ”転売するのは、厳密にはライセンス違反ですし、出品者がサイバーリンクに製品登録していたら落札者は製品登録できません。

“OEM版のためサポートはありません”

 これも嘘です。製品登録さえすれば、OEM版であってもサイバーリンクのサポートを受けることは可能で、そのための専用ページまで設けられています。怪しげな出品の説明にある”サポートがない”の真意は、出品物が不正な製品であることが落札者にバレてしまうのでサイバーリンクに問い合わせられては困る、ということを暗に意味しているのです

“製品の更新は可能です”

 サイバーリンク社はある意味太っ腹で、ユーザ登録の有無に関わらず、製品の更新ファイルは誰でも入手できるよう公開しています。つまり、更新が可能であるか否かは、製品が正規品かどうかとは無関係なのです。製品の更新が可能であることを強調するのは、出品物を正規品であるように見せかけるため以上の意味はありません。

“ライセンスキーはソフトウェアに内蔵”

 どのような文言で書くかは出品者それぞれですが、本稿執筆時点で確認できた範囲では、以下のような記載を見かけました。

  • “クラック品や改造を施したものや特殊な手段でインストールするソフトウェアではなく、通常のセットアップファイルをご案内し、そのままインストールしていただければ完了です”
  • “クラック品や改造を施した類の物はありません”
  • “ライセンスキー は、ソフトウェアに内蔵されております”
  • “商品はファイル(キー込)のお渡しとなります”

 ダウンロード版であれパッケージ版であれ、市場に流通している正規のサイバーリンク製品は、すべてプロダクトキーを利用したアクティベーションが必要となります。ライセンスキーが内蔵されている = インストール時に入力の必要がない製品は、ボリュームライセンス版かクラック版しかありえません。

ボリュームライセンス版とは何か

 あるソフトウェアを大量のPCに一斉導入する際のコストを抑える、あるいはインターネットに接続できない (= アクティベーションができない) 環境での利用を可能にするため、一般市場向けとは異なる特別仕様のソフトウェアを用意し、企業など大量導入を行う大口ユーザ限定で提供されるのがボリュームライセンス版です。提供形態としては、大きく分けて以下の2つがあります。

  • 複数回利用できる特殊なプロダクトキーの提供 (マイクロソフトなど)
  • アクティベーションがない特別仕様のソフトウェアの提供 (サイバーリンクなど)

 前者の場合、アクティベーション可能回数の上限は、端末の更改などを想定して契約数よりも多めの回数が設定されますが、それを超えると契約違反の恐れありとしてメーカー側がそれ以上のアクティベーションをブロックします。なお、正当な理由で上限を超えてしまった場合は、メーカーに連絡して事情を説明すれば、通常は制限を解除してもらえます。

 特にマイクロソフト系の製品でよく見かける”認証保証”とか、”認証に失敗した場合は新しいプロダクトキーを提供します”という出品は、出品者が持つ不正なボリュームライセンスのプロダクトキーがいつブロックされるかわからないため、ブロックされたら手持ちの別の(不正な)キーを提供する、と言っているのです。ちなみにマイクロソフトの場合、契約者は自身に提供されたボリュームライセンスのプロダクトキーがあと何回利用できるかを、サポートサイトで確認することができます。

 サイバーリンクのボリュームライセンスは後者になるため、出品者は”キーは内蔵されている”とか”アクティベーションが不要(そのまま導入すれば完了)”という文脈で表現します。ボリュームライセンスはアクティベーションという技術ではなく、契約という紳士協定で導入台数の制限を行うため、契約台数以上への導入、あるいは契約組織外での利用は重大なライセンス違反です。サイバーリンクのボリュームライセンスの提供先は官公庁と教育機関しかないため、そもそも正統なボリュームライセンスを保持する個人は存在し得ません。言い換えれば、アクティベーションがない、あるいはキーが内蔵されているなどと謳うサイバーリンク製品の出品は、100%間違いなく不正なライセンスであることになります。

クラック版とは何か

 前述の通り、個人向けの製品には必ずアクティベーションが伴います。クラック版は、ソフトウェアそのものを改造することでアクティベーションなしで全機能を利用できるようにしたものです。書くまでもなく、これも重大なライセンス違反です。

 クラック版に近いものとして、アクティベーションに必要となるプロダクトキーの生成アルゴリズム (法則) を解析し、理論上は有効なプロダクトキーを生成するソフトウェアが存在します。前述の認証保証は、このようなソフトウェアを悪用し、コスト0で無限にプロダクトキーを生成して落札者に売りさばいている場合もあります。

詐欺師はどうやって”元となる”不正な製品を仕入れているのか?

 詳細は触れませんが、ボリュームライセンス版やクラック版のソフトウェアを、ヤフオクでの販売価格より数段安い値段で入手することは、さほど難しくありません。幸か不幸か、サイバーリンクの製品は原則すべて多言語版であり、英語圏で購入した製品でも日本語で利用できてしまいます。ヤフオクに蔓延る詐欺師は、どこからともなくこのような真っ黒なソフトウェアを仕入れ、日本のヤフオクで売りさばいているとみて間違いないでしょう。

 認証が不要なボリュームライセンス版やクラック版のたちが悪いところは、打ち出の小槌のごとく無限に有効なコピーを生み出すことができる点にあります。要するに、ひとたび入手してしまえば、原価ゼロで永久に売り続けることができてしまうのです。これが考えられないくらい安価に、かつ不自然なほど大量に出品し続けることが可能なからくりです。ヤフオクの場合、落札価格の8.64~10%が出品手数料としてヤフーに徴収されますが、落札価格の9割は詐欺師の純益となるため、たとえ10,000円の製品を1,000円で出品しても、売り続ければ十分な儲けが得られるのです。


“インストール可能台数は2台まで”

 2019年1月頃から見かけるようになった記述ですが、2台に導入できるようなライセンスは同社の製品には存在しません。レイアウトが崩れてしまいますが、サイバーリンク社の公式ページに以下のような記載があります。

1ライセンスで複数のパソコンにインストールできますか?

弊社製品は特別な許可が無い限り、1ライセンスにつき1台のパソコンへのインストールしか許可しておりません。複数台のパソコンへのインストールをご希望の場合はその数のライセンスをお買い求めください。パソコンを買い換えた場合などで他のパソコンへのインストールをする場合は、古いパソコンにインストールされている製品をアンインストールしてから新しいパソコンにインストールしてください。

 特別な許可が何かはわかりませんが、上記より新規購入で2台に導入できると謳う出品は、確実に不正な出品であるということになります。

出品者の特徴

 出品している商品そのものだけでは判断がつかない場合でも、出品者の情報である程度見分けることも可能です。これらのいずれかに該当する出品者が出品している製品は、ほぼ間違いなく不正なソフトウェアでしょう。

  • 他の出品物の全てもしくは大部分が、市場価格から大きく乖離した (1/5もしくはそれ以下) 激安ソフトウェアである
  • 悪い評価がついている (コメントを見ると出品物の内容が伺い知れる場合もあります)
  • “違反商品の申告”をクリックすると、評価が高い出品者からの違反申告がある

詐欺師を儲けさせてはならない

 同じソフトウェアを同じように利用できるのであればなるべく安く買いたい、という気持ちは誰にでもあると思いますが、それにつけ込んで大儲けをしている詐欺師が少なからずいるのも事実です。

 怪しげな商品の出品者情報を見ると、勲章が表示されている場合があります。勲章が1つ = ブロンズランクを得るには直近3ヶ月で10万円〜30万円の、勲章が2つ = シルバーランクを得るには同じく30万円〜100万円の売り上げが必要となります。管理人はシルバーランクの詐欺師は何人か見かけたことがありますが、何しろ出品物の原価は限りなく0円に近く、手数料を除いた粗利率は90%以上なのですから、笑いが止まらないでしょう。

 もしこれがインターネット上のオークションではなく、実世界だったらどうなるでしょうか?おそらくまともな商売をしている店がまず潰れ、そこから売り上げを得ることができなくなったメーカーが廃業に追い込まれ、最後は詐欺師だけが儲け続ける世界が来るのではないでしょうか。そうならないためにも、詐欺師を潤わせるようなことは絶対に止めましょう!

コメントする